大安禅寺(本堂) 石工事のまとめ

昨年は大安禅寺様の本堂の石工事を丸一年かけて行っておりました。

「重要文化財 大安寺本堂ほか7棟保存修理事業」

その名の通り、一番メインの建物の保存修理工事となっております。

現在も工事は進行中ですが、この一年の模様をお伝えいたします。

※資料については昨年11月に大安禅寺様で開催された日本遺産フェスで使用したものから抜粋しております

奥に見えるのが解体前の本堂の写真。現在は素屋根に覆われています。

今回はかつてない規模の復原工事でしたので、たくさんの課題がありました。
それを一つずつ見ていきたいと思います。

1:石材の管理

今回、本堂は約500個の石があり、それを一度すべて解体し、本堂基礎打設後、あるべき姿に復原していく必要がありました。

石の取間違いや石の向き間違いは厳禁です。

そのためすべての石材に番号を振り、2000枚近くの写真を撮影し、管理していきました。

本堂の石番図。 取替のもの、補修するものの区別なども記載してあります
石番に貼りつけたラベルの様子。なかなかラベルが石に貼りつかなくて苦労しました・・・
仮置された様子の一部です。礎石や束石などグループ毎に分け、仮置図もリアルタイムに更新

2.人力での解体作業

建物全体がジャッキアップにより工事はしやすくなりましたが、障害が色々とあり、ほとんどの石材は機械が使用できないため、主に人力での解体になりました。

そこで、設計・監理の文建協さんからのご提案をうけ、元請の松浦建設さんと協議し、以下の工法が生まれました。

石を吊上げた状態で、基礎コンクリートを打ち、 その後、石を下ろすという新工法

この工法で行けるかどうかを判断するため、弊社工場にて実験しました。

現地の環境を再現し、検証を経て、いざ本番へ!
勝山・大野の奥越の石屋さんに助っ人で来てもらいました。
彼らはこういった重量物の扱いが得意なのでとても頼りになりました!

こうして、礎石を運び出すことなく吊上げた状態で基礎工事へと進みました

なかなかシュールな絵です・・・

とは言いつつ、今は令和の時代ですので、機械で作業できるものは機械を使用しています。

こうして、無事にすべての石を解体・搬出することができました。

3.求められる復原の精度

文化財で使用される言葉に「復原」がありますが、一般的に使われる「復元」とは意味が異なります。

一乗谷も「復原」町並です。
実際に復原された石材。この後、ジャッキダウンで建物が下ろされました
丁張に合わせmm単位で据付ていきます
クラウドに保存した写真データを現場で常に参照し、据付ていきます

石の据付が正しくしていないと、その上の構造物(木・建具など)に影響するため細心の注意を払いました。

4.笏谷石の補修

本堂の笏谷石はすべて350年前の文化財です。

完全に使用が難しいものは取替ましたが、使用できるものはなるべく補修や補足を行い復原しました。

手前の石は折れた石でしたので、現場で補修します
ダボピンを入れ折れた二つの石に骨を入れます
接着剤を注入し接合

表面の擬石補修。特殊な補修材を使用しています
最後に既存の石に合わせた仕上げを行い、補修が完了しました。もうどこを直したのかわかりません
以前掲載したこちらのページもご覧ください。

まとめ

長文になりましたが、記憶がフレッシュなうちに、昨年1月から行ってきた工事の内容をまとめてみました。

文化財の工事になると、みんな口を揃えて「やったことない」と言うそうです(笑)

たしかに、やったことないことばかりの工事でしたが、 関係者各位のご協力と努力のもと、 疑問点を分解し、わかることを積み上げていき、ひとつひとつ形にしていきました。

その考察過程で、「350年前の職人ならどうしたのかな・・・」と、昔の人の思いを読み取ることがとても重要だと感じされられた仕事でした。

これから文化財に関わる方の参考になれば幸いです。